ALC外壁材の塗装工事

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ALCの外壁住宅にお住まいの方が悩んでいること、及びその解決方法

ALCとは、高湿高圧蒸気養生(Autoclaved)、軽量気泡(Lightweight aerated)、コンクリート(Concrete)のそれぞれ頭文字をとった言葉です。ALCの成分は、珪石、セメント、生石灰、石膏、アルミニウム粉末などで構成されています。ALCは、耐火性、防火性、強度といった、建築物に求められる性能を満たしており、外壁や床下地、間仕切壁等に利用されています。

ALCのメリット

 ALCは、外壁の素材として様々なメリットがあります。ALCのメリットは、概ね次の通りとなります。

  • ①通常のコンクリートより軽量である。
  • ②熱伝導率が、通常のコンクリートの1/10であり、断熱性が高い。
  • ③防火性能が高い。
  • ④粉砕するとリサイクルすることができる。
  • ⑤軽量であっても強度も十分にある。

このように、様々なメリットがある、建築物に適した素材となっています。

ALCの問題点

 ALCも、他の外壁同様に適切にメンテナンスを行わなければ、劣化の速度は早まります。まずは、ALCの問題点を理解し、そのうえで適切なメンテナンスを行う必要があります。ALCの問題点は、次の2点です。

  • ①防水性は期待できないALCは、多孔構造となっていますので、防水性は期待できません。ALCを外壁として使用する場合は、防水性を持たせるために仕上げ材を塗布します。
  • ②吸水性が高いALCは、吸水性も高い素材となっています。特に、寒冷地においては、ALCが吸水した水分が凍結することによって剥離することにつながります。

ALCの問題の解決策

 「ALCの問題点」で示した通り、ALCの弱点は「水に弱い」ということです。ALCそのものの防水性はほとんどなく、その上、吸水性が高い素材となっていますので、そのまま使用すると、当然、すぐに雨漏り等につながります。また、ALCが吸水してしまうと、強度や断熱効果が著しく低下しますので、防水加工は必須となっています。

では、どのように防水加工を行うのかというと、ALCに仕上げ材を塗布することで、仕上げ材の防水効果を利用するという方法になります。そのため、ALCの仕上げ材には、防水効果の高い仕上げ材を使用する必要があります。

 

ALCに適した仕上げ材

シーリング材

 ALCのパネル同士を結合させるために使用します。ALCは多孔構造になっていますので、パネル同士のつなぎ目からも水が侵入する可能性があります。そのため、防水機能をもったシーリングで完全に接合してしまうことで、ALCパネル同士の結合部分からの水の侵入を防止します。

 ALCは1枚の外壁材ですべての外壁を構築しているわけではありません。サイディングボードと同様に、ALC同士をつなぎ合わせる必要があり、その部分にコーキングが施されています。ALCは、サイディングボードよりも多くの継ぎ目がありますので、その分、多くのコーキングをしなければなりません。また、サイディングボードよりも狭い幅にコーキングを施す必要があるため、どうしても補修費用は高くなってしまいます。しかし、ALCを外壁材として選択する以上は、必ずコーキングの補修を行わなければなりません。

ALCでコーキングの補修を行う必要がある理由

 ALCを外壁材として選択した場合は、定期的にコーキングの補修を行わなければなりません。そもそもコーキングの目的は、外壁材同士をつなぎ合わせるほかに、そのつなぎ目から水が侵入しないようにする目的もあります。これはサイディングボードであってもALCであっても同じです。

 コーキングが劣化してしまうと、コーキングにひびが入ってしまったり、コーキングがやせたりしてしまいますので、そこから水の侵入を許してしまうことになります。そうなると、外壁内部に水が浸透し、建物の傷みにつながってしまいます。また、ALCはサイディングボードよりも吸水性が高いという特徴があります。

 ALCの主成分はセメントですので、ALC内部に水が入り込むと、主成分のセメントが水を吸ってしまいます。さらに、ALCは軽量気泡コンクリートという名前の通り、多くの気泡がありますが、水がその気泡に入り込んでしまいます。その状態で冬の寒い日を迎えてしまうと、気泡内の水分が凍結し、膨張することでALCの内部からひび割れが発生してしまうことにつながります。ALCは、それだけ水分に弱い素材なのです。ですので、定期的にコーキングの補修を行って、水分がALCの内部に侵入しないようにしなくてはなりません。

参考:シリコンコーキングの耐熱温度について

ALCのコーキングの打ち替え方法

 ALCの場合は、コーキングを打ち増しすることもありますが基本的には多いです。ALCのコーキングを打ち換えるには、大きく分けると古いコーキングの除去と、新しいコーキングの打設という2つのプロセスがあります。

①古いコーキングの除去

ALCのコーキングを打ち換えるには、初めに古いコーキングをしっかり除去する必要があります。コーキングの除去は手作業で古いコーキングが残らないように丁寧に除去する必要があります。ここで失敗すると、古いコーキングが薄皮のように残ってしまい、新しく打設するコーキングが外壁材としっかり密着せずに、すぐに剥がれてしまうことにつながります。 ただALCは簡単に削れてしまいますのでプライマーをしっかり吸収させて表面に接着面を作ることが大切です。また、古いコーキングを除去する際にALCそのものを削ってしまうと、目地が直線ではなくなってしまいます。目地が直線でなくなると、美観を悪くするだけでなく、ALCを傷つけないように古いコーキングを除去する必要があります。

②新しいコーキングの打設

 新しいコーキングを打設する際には、数あるコーキングの中から最適なものを使用するという点に注意しなければなりません。コーキングの上から塗装する予定がある場合には、ポリウレタン系のコーキングを選択する、または塗装への汚染を考慮してノンブリードタイプを選択するといったことを検討するなど、状況にあったものから適切なものを選択しないといけません。これらのコーキングの種類が決まった後は、ALCとコーキングの種類に合わせてプライマーを選択しなければなりません。プライマーは、ALCとコーキングを密着させるための下塗り材のことを指し、この種類を誤ってしまうと、コーキングがしっかりと接着されずに、コーキングの剥がれにつながってしまいます。

このように、新しいコーキングを打設する場合には、多くの選択肢の中から、最適なコーキング、およびプライマーを選択しなければなりません。ALCのコーキングは、サイディングボードのコーキングと同様に一定期間ごとに補修が必要となります。しかし、ただ補修をすればいいというわけではなく、最適な補修をすることによって、コーキングの耐用年数を高めることもできますし、お客様の希望の美観に合わせることもできます。

下塗り材

 一般的に使用されているフィラーでも問題ありませんが、微弾性のフィラーやウレタン系のシーラーを使用しても問題はありません。微弾性のフィラーを厚塗りすることで、クラック遮蔽性と防水機能を高める効果があります。

上塗材

 上塗材は、アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素系等の塗料を塗布することで、防水機能を高めます。

ALC外壁のメンテナンス

 以上のように、ALCの場合は水の侵入に十分注意しなければなりません。そのメンテナンス方法としては、仕上げ材による防水性能の維持ということになります。つまり、定期的に外壁塗装工事を行い、防水性能を維持しなければならないということになります。

では、外壁塗装工事を行うタイミングの見極めはどのように行えばいいのかというと、次のような確認ポイントがあります。

チョーキング

 塗料の劣化により、塗料に含まれる樹脂が加水分解することで、白い粉状になることをチョーキングと言います。チョーキングしている外壁を手で触ると、白っぽい粉が付着しますので、すぐに判断することができます。チョーキングしているということは、塗料の表面が劣化しているというサインですので、外壁塗装工事をご検討いただく時期の目安としていただくのをおすすめします。

シーリングの劣化

 ALCパネル同士の結合部に使用されているシーリングが痩せてきている(すきまがある)状態や、剥がれ、ひび割れが起こっている場合は、シーリングが劣化していると判断できます。ALCの場合ほとんどの場合、シーリングは塗膜に隠れており、シーリングのほうが塗装部分より耐用年数が長いため、シーリングに劣化が生じている場合は、塗装部分も劣化していると判断し、シーリングの追い打ちや打ち直しと同時に外壁塗装工事を行うことをおすすめします。

カビや藻の付着

北側の外壁や日当たりの悪い面に発生しやすい症状です。カビや藻が発生している場合、ALCの穴に対して、防水処理が施しきれていないことによって吸水してしまい、カビや藻が発生してしまうリスクが考えられます。この場合、ローラー施工等でしっかりと塗料を塗りこむといった処置を行う必要があります

参考:外壁塗装工事後の塗膜の剥がれを防ぐために

まとめ

 ALC外壁は、他の材質と比較しても特に水に弱いため、ほかの材質以上にしっかりと外壁塗装を行っていかなければなりません。せっかくのALCのメリットを最大限に活用するためにも、塗装の劣化のサインを見逃さず、少しでも劣化の兆候が見え始めたら、外壁塗装工事を検討するようにしてください。

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