近年、主流になっている外壁塗装の工法は、ローラーを使用する「ローラー工法」です。サイディングの外壁が主流である今、以前はよく使われていた「吹き付け工法」は、モルタルの外壁とともに目立たない存在になっています。しかし、吹き付け塗装には吹き付け塗装なりの魅力があることは間違いありません。その吹き付け塗装のなかでも、多くの家に施工されてきたのが「リシン吹き付け」です。

そもそも吹き付け塗装とは

吹き付け塗装とは、読んで字のごとく、スプレーガンを使って外壁を塗る工法のことです。「リシン吹き付け」はこの吹き付け塗装のひとつで、「スタッコ仕上げ」などとともに、モルタルの外壁にデザイン性を与えるために使われてきました。スプレーガンは塗料の噴射圧を微調整できるため、ローラーとはまったく異なる独特な味わいで外壁を演出することが可能です。

リシン吹き付けとは

リシン吹き付けの「リシン」についてまずは説明しておきましょう。ここで言う「リシン」は、トウゴマという植物のタネから抽出されるという猛毒物質のリシンではありません。リシン吹き付けのリシンについては、実はその語源ははっきりとはわかっていないのですが、どうやら、以前、海外から入ってきた吹き付け材の商品名がそのまま和製英語として使われるようになった、というのが有力な説のようです。

リシン吹き付けは、モルタルの外壁に表情をつけるための表面化粧材であるリシンを吹き付ける塗装方法です。リシン吹き付けのリシンには、セメントのほか、アクリルや顔料などが含まれており、ローラーやコテ仕上げとはまったく異なる、土壁に似たザラッとした風合いに仕上がります。

リシン吹き付けは、モルタル外壁の仕上げとしてはもっともよく使われている工法です。リシンガンというスプレーガンを使って吹き付けます。

現在はサイディングに押されそれほど目立つ存在ではありませんが、木造の和テイストの家や、西洋テイストの土壁の家などにとてもマッチする仕上げだといえるでしょう。

そのほかに、リシンには「リシン掻き落とし」という表面仕上げ方法があります。こちらは吹き付けたリシンが固まる前にワイヤーブラシなどを使って引っ掻き、繊細な模様をつける外壁デザイン手法です。

リシン吹き付けのメリット

リシン吹き付けに備わるいくつかのメリットが、「コスパのよさ」を実現します。

材料費が安い

リシン吹き付けで使う仕上げ材は、モルタルの仕上げで使う仕上げ材のなかでも最安です。予算を抑えて家を建てたいという方にとっては、初期費用を抑えられるうれしい存在です。

通気性がよく家にやさしい

リシン吹き付けの仕上げは、ほかのモルタル仕上げ材との比較でも通気性に優れます。モルタル外壁の家は木造であることがほとんどですから、優れた通気性が確保されることにより外壁材や躯体の内部に湿気がとどまりにくくなります。通気性のよさで湿気による腐食から家を守るリシン吹き付け。リシン吹き付けは家にやさしいのです。

落ち着きのある高級感を演出できる

リシン吹き付けは、外壁に落ち着きのある高級感を与えることができます。リシン吹き付けにはツヤがあまりないので、サイディングとはまた違った高級感を演出できるのです。

リシン吹き付けのデメリット

ザラッとした風合いのリシン吹き付けの仕上げはとても魅力がありますが、その仕上げだからこそのデメリットもあります。

ひび割れしやすい

リシン吹き付けは、吹き付けに使う塗料の中に含まれている樹脂が割れやすい性質を持っていること、そして塗膜が薄いことからひび割れしやすいというデメリットがあります。モルタル自体、ひび割れが発生しやすい外壁材ですが、そのモルタルのひび割れにより塗膜に負荷が加わりひび割れてしまうという面もあるようです。

ただ、現在は伸縮性の備わる「弾性リシン」が普及しているので、以前ほどひび割れについては心配する必要がなくなってきています。

汚れがつきやすい

ザラッとした仕上げのリシン吹き付けは、その凹凸部分に土埃などがたまりやすく、汚れやすいという欠点があります。汚れが蓄積されると水分をうまく流すことができなくなるため、コケやカビが発生してしまうと外壁がさらに汚れて見えてしまいます。

リシン吹き付けにはこのようなデメリットがあるため、全般的に見るとほかの表面仕上げよりも短いサイクルでメンテナンスする必要があります。建物の立地条件にもよりますが、8年程度のサイクルで塗り替えが必要になるでしょう。

リシン吹き付けの外壁のメンテナンスについて

ご紹介したように、リシン吹き付けはひび割れしやすく汚れやすいため、定期的に状態を確認し、劣化症状を見つけたら適切に対処することが重要です。

ヘアークラックへの対処

ヘアークラックは、外壁塗装の塗膜部分に発生する細かいひび割れです。リシン吹き付けの場合は、下地のモルタルにまでは到達していないひび割れで、その深さは0.3mm以下です。ヘアークラックは放置してよい劣化ではありませんが、早急に対応が必要な劣化でもありません。しっかり経過を観察して、必要なときに対応することが重要です。

ひび割れへの対処

ヘアークラックよりも深いひび割れは、すでに下地のモルタルに達しているためすぐにメンテナンスする必要があります。そのまま放置するとモルタルにまで水分が浸透し、住宅の内部まで到達し、雨漏りやシロアリなどの害虫が発生する原因となりかねないので注意が必要です。ひび割れにはシーリング材を注入し、さらに下塗りしたあと塗装をして仕上げます。

チョーキングへの対処

塗膜の劣化の主原因は紫外線です。紫外線にさらされる塗膜は、塗装した時点で劣化が始まります。チョーキングは、紫外線の影響で劣化した塗料に含まれている顔料が粉状になって外壁面に浮き出てくる現象です。外壁を指で触れると粉状の物質が付着するので比較的わかりやすい劣化症状なのですが、リシン吹き付けの外壁は凹凸があるため、チョーキングが発生していてもわかりにくいので厄介です。それでも、チョーキングが発生しているなら外壁に触れるとうっすら指に粉状の物質が付着してくるはずなので、チョーキングに気づいたら塗装店に相談しましょう。

カビやコケへの対処

カビやコケは排水性能が落ちた外壁に発生します。そのままにしているとカビやコケは水分をどんどん吸収してしまうため、塗膜をどんどん劣化させ、水分を防御できなくなった外壁材の内部まで浸透していってしまいます。そのため、カビやコケが発生したら、なるべく早く塗り替えによるメンテナンスを行いましょう

リシン吹き付けの外壁の塗り替えについて

近年は、リシン吹き付けの外壁であっても吹き付けではなく、ローラーで塗り替えるのが一般的です。凹凸があるリシン吹き付けの外壁でも、フィラーという下塗り塗料を使って下塗りをすることで、ローラーでまんべんなく塗ることができます。もちろん、吹き付けにより再塗装することも可能ですが、最近は吹き付け塗装をできる業者の数も減少傾向にあるため、腕の確かな職人が作業をしてくれる業者を探すこと自体が難しくなっているのが実情です。

まとめ

リシン吹き付けは、機能性、そして高級感がある見た目を兼ね備えるコスパのよい外壁の表面仕上げ方法です。耐用年数は短いためメンテナンス頻度は増えますが、魅力のある仕上げであることは間違いありません。