今では、多くの家に使われているサイディングボードですが、現在使用されているサイディングボードは、その誕生から多くの改良がくわえられたものになっています。

ここでは、サイディングボードの歴史と、サイディングボードが変化したことによる塗装工事の変化についてご紹介したいと思います。

サイディングボードの歴史

 最近建てられている建物の多くは、外壁材にサイディングボードが採用されていますが、日本の住宅にサイディングボードを使用する歴史はそれほど長くはありません。日本で初めてサイディングボードが開発されたのは、1974年に開発された防火外壁材の「モエン」という商品でした。この「モエン」という商品は、現在でもシリーズ化が続いていますが、この時代では住宅にはほとんど使用されていません。住宅にサイディングボードが使用されだすのは、そこから15年以上経った1990年以降になります。

このころから、日本家屋から洋風の住宅が多く作られるようになり、外壁にサイディングボードが使用され始めることになりました。また、サイディングボードのデザインも、レンガ調やタイル調といったデザイン性の高い商品も多く使われ始めています。

1995年には阪神・淡路大震災が発生し、耐久性の高い住宅が求められるようになりました。軽量で耐久性の高いサイディングボードが特に注目を集めた時代で、当初、数種類しかなかったレンガのデザインやタイルのデザインも、この時代に非常に多くの種類が追加されています。

2000年になると、住宅の個性が求められる時代となり、これまで1色だった外壁のデザインも、複数の色を使い分け、リアルなレンガを表現できるサイディングボードや、木目調、塗り壁調といった個性的なデザインのサイディングボードが登場しています。

2005年には、さらにデザイン性を高めるために、次世代インクジェット塗装と言われる技術を使用して、サイディングボードに好きなデザインを行うことができるようになりました。これによって、これまでの大量生産型のデザインから少量生産型のデザインにシフトし、より個性的なサイディングボードとなっています。

このように、最初は機能性を重視していたサイディングボードですが、2000年を境に、より洗練されたデザインが好まれる時代と変化しています。

サイディング コーキング 打ち替え

サイディングの施工方法

1.直張り工法とは

サイディングの施工方法の一つである、直張り工法というのは、その名が示すとおり、外壁材であるサイディングを、下地に対して直に張る工法のことをいいます。一方、柱や間柱に透湿防水シートを張り、胴縁を打ち付けることで、サイディングを下地に直接張らず、隙間をあける工法が通気工法となります。
直張り工法のメリットは、なんと言っても費用の安さです。下地に対して直にサイディングを張ることができるため、余計なコストをかけずに施工することができるため、費用を安く抑えることができます。一方、下地に直接サイディングを張る、直張り工法では、サイディングから中に侵入した水分は、そのまま下地に浸透してしまうため、建物の防水性は低下してしまいます。
そのため、建物の耐久性を向上させるのに向いているのは、通気工法となります。そのため、2000年4月の品確法では、標準工法として通気工法を取り入れることとなっていますので、それ以降に建てられた住宅の殆どが通気工法となっています。しかし、この法律には罰則規定がありませんので、一部の住宅では、2000年4月以降に建てられたにも関わらず、コストを下げるために直張り工法が使われているものも存在しています。
なお、直貼り工法の場合、サイディングと下地の間に通気層がないため、結露が発生しやすくなってしまいます。一時的な結露であれば、それほど大きな問題は発生しませんが、長期的に結露が発生し続けた場合は、その部分が徐々に腐食し、雨漏りの原因となります。

2.直張り工法のメンテナンス

直貼り工法では、下地にサイディングを直接張っているため、サイディングから入り込んだ雨水は下地に直接吸収されますが、下地に吸収されなかった水分はサイディングと下地の間に滞留することになります。つまり、常に下地とサイディングが湿っている状態になります。サイディングそのものにも通気性がありますが、滞留した水分が簡単に出ていくほどではありませんので、一度入り込んだ雨水は、長期間、滞留することになります。そうすると、下地とサイディングそのものにダメージを与えることとなり、下地側は、下地の腐食や雨漏りに、サイディング側はサイディングの歪みが発生することになります。

  1. 塗装によるメンテンナンスー直貼り工法で施工している場合は、通気工法で施工しているサイディング以上に、塗装による防水が重要となります。直貼り工法であっても、定期的に塗装を行うことで高い防水性を維持しておくことで、内部に雨水を侵入させることなく、建物の耐久性を維持することができます。
  2. コーキングのメンテナンスーまた、サイディングの場合は、サイディング同士をつなぎ合わせるコーキングのメンテナンスも非常に重要なものになります。先述したとおり、雨水がサイディングの中に入り込んでしまうと、サイディングと下地の双方に大きなダメージを負ってしまうため、コーキングからの雨水の侵入も防止しなければなりません。サイディングそのものが劣化し、沿ってしまった場合、必然的にコーキングが剥がれてしまうことになりますので、サイディングを保護することもコーキングのメンテナンスの一部と考えることができます。

3.サイディングが劣化してしまったら

直貼り工法のサイディングが劣化してしまった場合、特にサイディングが反ったり割れてしまった場合、多少のコストが掛かったとしても、通気工法でサイディングを張り直すことをおすすめしています。初期投資はかかるものの、建物の耐久性を向上させることができるため、長期的に見た費用は安く抑えることができます。

直貼り工法は、費用が安い、工事が簡単というメリットはあるものの、建物の耐久性を考えた場合には、おすすめできる工法ではありません。そのため、金銭的に可能であれば、できるだけ早い時期に通気工法でサイディングを張り直すことを強くおすすめします。
しかしながら、適切にメンテナンスを施すことで、直貼り工法であっても建物の耐久性を高めることは可能です。直貼り工法のサイディングを張り替えない場合は、建物の耐久性を少しでも伸ばすために、適切なメンテナンスを定期的に実施することをおすすめします。

 塗装工事の変化

 サイディングボードの塗装工事は、サイディングボードが外壁に使用され始めた1995年からおよそ7年後の2003年ごろから徐々に件数が増加してきました。当初はレンガ調・タイル調といっても、1色で構成されていることが多く、お客様のご要望もこれまでのデザインに似た色にするか、全く異なる色にするかという、色に関するご希望が多く寄せられていました。

しかし、2007年ごろから徐々にデザイン性の高いサイディングボードを使用した外壁の塗装依頼をいただくこととなり、お客様のご要望も、これまで通りの1色での塗装から複数の色を使えないかというご要望をいただくことが増えてくることになります。

そこで開発されたのが、外壁の2色塗りという技法です。

  1. 1つ目は、下塗りはこれまで通り下塗り材を使用して塗装し、中塗りと上塗りの塗料を変更することによって、複数の色が混ざった複雑なパターンを表現する塗り方を行うという方法です。この塗装では、中塗りと上塗りの塗料を特殊なローラーで塗り分けることで、デザインの個性に対応することができます。https://yokoi-tosou.net/単色塗装はもう古い!?新しい塗装方法「多彩仕/
  2. 2つ目は、外壁に細かくマスキングすることによって、色を付ける部分と付けない部分に分けるといった特殊な塗装方法です。1色で塗りつぶすのとは違い、メリハリのある外壁を表現することができる塗装方法となっています。

さらに時代が進むと、外壁そのもののデザイン性が非常に高く、メンテナンスを行わなければならないのは理解しているが、外壁のデザインを損なわないでほしいというご要望が増えてくることになりました。そこで開発されたのが、外壁のクリア塗装です。

サイディング クリア塗装

 外壁のクリア塗装では、透明の塗料を使用して外壁塗装を行いますので、外壁のデザインをそのまま残すことができます。しかし、外壁に生じた傷などもそのまま残ってしまいます。下地処理で傷を修復したとしても、透明な塗料で塗っているため、その修復後を隠すことができませんので、現在の技法を持ってしても、新築から初回の外壁塗装の際に使用できる方法であって、毎回使用できる技法ではありません。それでも、ご要望は増加傾向にありますので、それだけ外壁のデザイン性が求められている時代となっていると言えます。

いずれの塗装方法も、しっかりとした技術を有した職人さんが、その技術をもって塗装工事しなければ、従前の1色で行う塗装工事に比べると品質が悪くなってしまう可能性のある塗装方法となっています。