外壁塗装の考える目安として、外壁に付着するカビやコケがあります。カビやコケが生えるということは、外壁に余計な水分が付着しているということで、塗膜による防水性能が低下してきているサインといえますが、かなり見た目が悪くなりますので、できれば外壁にカビやコケが付着するのは防止したいですよね。

外壁に付着するカビとコケの違い

 今回のテーマは「外壁につくカビの種類とその対策」としています。テーマの中に「コケ」は含まれていません。テーマの中に「コケ」を含まなかったのには理由があるのです。外壁塗装の劣化を見分ける方法として、「カビやコケの付着」というように、ほとんどセットで出てくる「カビ」と「コケ」ですが、この2つは似ているようで全くの別物です。「カビ」は菌類に属しています。つまり微生物です。一方、コケは藻類になりますので植物なのです。

植物である「コケ」が外壁に付着すると、見た目は非常に悪くなり、付着した部分が常にジメジメしているため、外壁に悪影響を及ぼしますが、人体に影響を及ぼすことはありません。しかし、菌類である「カビ」は、「コケ」と同様に外壁の美観を損なうほか、水分を蓄積して外壁に悪影響を及ぼすほか、人体にも影響を及ぼします。具体的には、カビが繁殖するための「胞子」を大量に吸い込むことによって、アレルギー症状が出てしまうことがあります。そのため、「カビ」は「コケ」以上に警戒しなければならないのです。

外壁に付着するカビの種類と繁殖する条件

 屋内・屋外問わず、住宅に付着しやすいカビとしては、クロカビ、ススカビ、アオカビ、ケカビ、黒色酵母菌、コウジカビなどがあります。カビそのものは数万種類存在するといわれていますが、住宅に付着するカビは、その中の57種類と言われています。住宅に付着するカビが繁殖する条件としては、以下の点が挙げられます。

 

  1. 立地的な条件ー住宅に付着するカビが繁殖するには、日当たりが悪いこと、風通しが悪いこと、湿気がたまったり結露を起こしやすいなどの原因によって、適度に水分があることが条件として挙げられます。つまり、暗くてジメジメした場所こそが、カビの繁殖に最適な空間となるのです。
  2. 構造上の条件ーカビは水分がなければ繁殖しづらい生物です。しかし、外壁は屋外にあることから、雨や結露によって外壁に水分を含んでしまい、そこからカビが繁殖してしまいます。そのため、外壁に凹凸があればあるほど、その部分に水分がたまりやすく、カビが繁殖しやすいと言えるのです。具体的には、吹き付け材によって細かい隆起を有するモルタルの壁や、ストライプなどの模様があしらわれたサイディングボードなどが、カビが繁殖しやすい外壁となっています。

カビの予防方法

 通常、原因が分かればそれを取り除くことが予防となるのですが、外壁に付着するカビを原因から取り除くと考えると、立地を変えるか外壁を変えるかといった、非常に大掛かりな作業になってしまいます。そのため、ここでは、それ以外の予防方法についてご紹介します。 

①カビの徹底除去

 カビは、少しでも残してしまうと、そこから再度繁殖を始めてしまいます。そのため、予防するためには、カビを徹底的に除去する必要があります。外壁の塗装工事を行う際に高圧洗浄を実施しますが、実は高圧洗浄で流れ落ちている部分は、カビのうわべだけなのです。カビは、外壁に付着すると、菌糸と呼ばれる植物の根のようなものを外壁の内部まで伸ばしていきます。高圧洗浄だけでは、その菌糸まで除去することはできません。

 そこで、カビが繁殖した外壁には、高圧洗浄前に中性洗剤なので滅菌した後に洗浄を実施します。そのため、奥深くまで根付いた菌糸にもダメージを与えることができ、再繁殖を防止することができます。

ヤネコケトール

②防カビ塗料の使用

 塗料には、少なからず防カビ機能が備わっていますが、それよりも防カビ効果の高い塗料も販売されています。また、添加剤タイプの防カビ材も販売されていますので、それらを使用してカビを予防するという方法もあります。防カビ塗料や防カビ材を使用することで、57種類のカビの他に、700種類以上の菌を予防する効果も期待することができます。

カビが発生した場合の注意点

 カビが発生した場合、安易にご自身で取り除こうとすると、カビの胞子が皮膚に付着したり目に入ったりすることもあります。ご自身で行う場合は、ゴーグルやマスク、手袋などを準備し、カビの胞子が触れないよう十分ご注意ください。また、ご自身でカビの除去を行ったとしても、菌糸が残っている以上はすぐに繁殖を開始してしまいます。なるべく専門の薬品を使用してくださいね。

藻やかびがある時の外壁塗装工事について

現場でも通りがかったお住いでも、少し藻やカビで汚れた感じのお住まいを見かけることがあります。藻やカビによる外壁の汚れは、ていどによりますが、あまり見て目に良くなく、汚い印象与えます。過湿な日本の環境の建物とくれば、藻やカビにとってこれほど快適な環境は無いのです。通常、塗膜がしっかりとしている場合は、ブラシやたわしで擦れば、藻やカビも落ちることがほとんどです。

しかしながらサイディングの素材部分まで根付いている場合があります。そんな場合は塗装時にはしっかりと殺菌して置かなければいけません。藻やかびは生命力が強く、処理が甘いと、少ない年数経過で再度また発生する可能性が高くなってしまいます。塗装する時点で、薬品を使ってしっかりとした処理をしておくのが好ましいです。

今回の現場でも、薬品を噴霧した後に高圧洗浄で汚れを落としていきました。(藻やカビは一般的なお住いでは、浴室や北側の湿気が多いところや風通しの悪いとこでよく見ます。)

外壁塗装工事の際には、洗浄剤で汚れをしっかり完全に洗い落としてから、その後、防カビ剤入りの塗料を塗ることでカビを防ぎます。今回使用する下塗り材は、ファイン浸透シーラー(もちろん防カビ剤入)

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特長

  • 弱溶剤系
    ターペン可溶(弱溶剤)タイプなので、強溶剤タイプに比べ臭気がマイルドです。
    塗り替え塗装時には幅広い旧塗膜適正があり、上塗りの選択幅も広いので、使いやすく便利です。
    (ただし、上塗り塗料に強溶剤形塗料は塗装できません。)
  • エポキシ樹脂
    浸透性が高く、素材に対して「くさび効果」を発揮します。ぜい弱素材の表面を補強し、強度を高め、素材と強固に密着します。
  • 使いやすさ
    ニーズに合わせて、透明タイプとホワイトタイプを用意。各種外壁からスレート屋根まで、幅広い下地に適用できます。

日本ペイントより

外壁のコケやカビ

コケが生える仕組みとは

 コケの対策を行うためには、まず初めに、コケが生える仕組みを知っておく必要があります。コケや藻は、何もないところからいきなり生えてくるように見えますが、その正体は、風に乗って飛んできた胞子が外壁に付着することで、そこから根をはることでコケが生えてきます。

基本的には、どんな材質であっても生えてくる可能性があります。外壁以外ですと、石やお風呂のタイル、土の上など、硬さに関係なく生えてくる繁殖力の高い植物となっています。

しかし、どんな場所であっても胞子が付着すると必ずコケが生えるのかというと、そうではありません。胞子が付着した場所に、十分な湿度と栄養があることが必須の条件となっています。

コケの予防策

 コケが繁殖するためには、十分な湿度が必要です。逆に、十分な湿度がなければ、コケが繁殖する条件が整いません。そのため、可能な限り湿度を下げることが、コケの繁殖を予防する対策となります。梅雨の時期や、雨が多い時期などは、どうしても湿度が高くなりがちですので、

コケの予防をするのは非常に難しいですが、風通しを良くすることで、乾燥させやすい環境を作り出すことができます。

例えば、外壁の近くにたくさんのものを置いている場合や、植物を植えている場合は、風通しが悪く、濡れた外壁が乾きにくくなっています。つまり、長時間、外壁に湿度が含まれてしまいますので、コケが発生しやすくなっています。そのため、外壁付近に物を置かない、植物を植えないということを意識すれば、コケの発生を予防することができます。

また、外壁そのものの防水性を高めるのもコケの繁殖を防ぐ予防策となります。新築の外壁は、非常にコケが生えにくくなっていますが、それは、外壁そのものの防水性が高く、すぐに乾燥しているのが原因です。そのため、新築の外壁と同様に、防水性能を高めることでコケの発生を予防することができるのです。外壁の防水性能は、外壁塗装を行うことで高めることができますが、一度外壁塗装を行うと、恒久的に防水性能を高めることができるというものではありません。外壁塗装による防水性能は、塗料によって作られる膜(塗膜)によって高められますので、塗料の劣化により徐々に低下してきてしまいます。そのため、定期的な外壁塗装を行う必要があります。

コケが生えるとどうなる?

 外壁にコケが生えてくると、外壁の見た目が非常に悪くなります。まるで、掃除をしていないような汚い外壁となってしまいますので、ご近所さんの視線が気になってしまいます。実は、外壁にコケが生えてしまうと、他にも影響が出てしまいます。

1つは外壁そのものの劣化です。コケが生えてしまうことによって、その部分だけが湿気を帯びてしまいますので、コケが生えた部分だけ湿気による腐食が進行してしまいます。雨や台風といった一時的な湿気ではなく、常時、湿気を帯びた状態で付着していますので、その間、ずっと腐食が進捗している状況になってしまうのです。

また、コケを放置することによって、カビが発生する原因にもつながります。カビが発生することで、人体にもアレルギーという形で悪影響を及ぼします。

コケを掃除するには?

 どれだけ注意していても、コケの発生を100%防ぐことはできません。コケの繁殖力は非常に高く、ちょっとしたことで条件がそろってしまうと、すぐに繁殖してしまいます。

そんな百害あって一利なしのコケを除去するためには、私たちプロは、塩素系漂白剤をつかうことがあります。しかしカビが残りにくい反面、サイディング自体を痛めてしまう可能性があります。よく、コケを取るために水で濡らした雑巾やたわしで、力いっぱい外壁を磨いている姿を見かけますが、強くこすってしまうと、外壁そのものに傷がつき、そこから腐食が進捗してしまいますので、おすすめはできません。

では、もしコケが発生してしまったら、どうすればよいのでしょうか。まずは、手作業でコケを落とす方法です。台所洗剤のような中性洗剤を使用し、外壁をこすることでコケを落とすことができます。ただし、力任せに外壁をこすると、塗膜や外壁に傷がついてしまうこととなり、コケを落としてもすぐに生えてきてしまいますので、力加減には注意が必要です。

次に、高圧洗浄でコケを除去する方法です。市販の高圧洗浄機を使ってコケを落とすという方法ですが、洗剤を使用しなくても、高圧の水で深く根のはったコケを簡単に落とすことができます。しかし、外壁に傷や痛みがある場合に高圧洗浄することで、外壁の内部にまで水が浸透してしまい、外壁材の内部が劣化してしまうという可能性もあるため、注意が必要です。

また、あまりに圧力が高い場合や、塗装が劣化している場合などは、高圧洗浄機を使用することで塗料が剥がれ落ちてしまうこともあります。塗料がはがれてしまうと、外壁材がむき出しとなってしまい、雨や湿気に非常に弱い状態となってしまいますので、それらの心配がある場合は、高圧洗浄機の利用は中止されたほうがいいでしょう。スチーム洗浄も同様に、サイディングの塗膜やシーリング目地を痛める時があります。

そこで、一般の方には、塩素系漂白剤よりかは、馴染みのある台所用洗剤をお勧めします。(※中性洗剤)

湿度が高く、コケが生えやすい。どうすればいいの?

 お住いの地域によっては、湿度が高く、どうしてもコケが生えやすいという環境のところもあります。ヨコイ塗装のある愛知県も、非常に湿度が高くジメっとした地域です。そんな地域にお住いの場合、コケの発生を抑止する方法はあるのでしょうか。

コケを抑止するには、コケが生えづらい環境にすることが重要です。例えば、風通しを良くすることによって、少しでも湿気を逃がす工夫をする。つまり、外壁のそばに極力、物を置かずに風通しを良くするという方法も抑止方法の1つです。

また、コケが生えやすい凹凸を極力なくすことも抑止できる方法の1つとなります。外壁そのものを平らなものにする、外壁に生じたヒビを補修するといった方法で、コケを抑止することができます。それでもコケが生えやすいというのであれば、外壁塗装を行う前に、しっかりバイオ洗浄等の専門対策を行うという方法があります。コケは外壁の奥深くまで根を張っていますので、しっかり除去して、抑止策を講じてもすぐに生えてくるという状況であれば、根が残っている状況ということが考えられます。

外壁塗装の業者に依頼すると?

 コケが生えた場合ということは、外壁の塗膜が薄くなったサインでもありますので、その機会に外壁塗装を検討するというのも1つの方法です。外壁塗装を専門に行う業者であれば、外壁の状態をしっかりと調査し、手作業でコケを落とすべきか、高圧洗浄でコケを落とすかという点で最適な方法を使ってコケを落とします。

また、表面だけきれいにしたとしても、根が残っているとすぐに生えてきてしまいます。そのため、ほうっておくと劣化速度が早くなります。

このように、コケはとても発生しやすく、さらに除去しにくいという特徴があります。まずは、定期的に外壁塗装を行い、外壁の防水性能を高めることで、建物のメンテナンスとコケの予防を同時に行い、さらに湿度が高くならないような対策をとることが必要となります。

 コケが生えている外壁であっても、きれいに除去しないまま塗装してしまうと、仕上がりの品質も悪くなりますし、コケによる外壁材の劣化も止めることができません。さらに、塗装の耐久年数も大きく下がってしまいます。