温度・湿度を記録しながら塗る — 数値で残す品質管理

愛知県扶桑町のH様邸にて、屋根・外壁・付帯部の塗装工事を完了いたしました。約45日間の工期となった本現場では、屋根の吸い込みが想定以上に激しく下塗りを3回、外壁素地が脆弱だったため下塗りを2回実施するなど、「決められた回数」ではなく「必要な回数」を塗るという現場判断を重ねた工事となりました。
本記事では、ヨコイ塗装が日々の現場で実践している品質管理の5項目と、本現場で発生した追加対応の記録を、施工写真とともにお伝えします。
施工概要
項目: 施工エリア / 内容: 愛知県扶桑町
項目: 工期 / 内容: 2026年3月12日(足場組立)〜 4月24日(足場解体・施工完了)
項目: 屋根 / 内容: ワールドセラルーフ SC-42(KFケミカル/無機ハイブリッド)下塗り3回 + 中塗り + 上塗り
項目: 屋根下塗り材 / 内容: KFスーパーエポⅡ(KFケミカル/浸透性クリヤー)
項目: 外壁 / 内容: ワールドセラグランツ 22-60C(KFケミカル/無機ハイブリッド)下塗り2回 + 中塗り + 上塗り
項目: 付帯部 / 内容: ワールドセラルーフ(KFケミカル/無機ハイブリッド)軒裏、破風、鼻隠し、雨樋、縦樋、帯、雨戸、水切り
項目: ベランダ床面 / 内容: プルーフロン GRトップ(2液型ウレタン防水)
項目: 追加工事 / 内容: 峰板金下木板交換(大工工事)、各所コーキング・シリコン補修
項目: 施工店 / 内容: ヨコイ塗装(ワールドセラ認定施工店)

使用塗料:無機ハイブリッド「ワールドセラ」シリーズで全面統一
本現場では、屋根・外壁・付帯部のすべてにKFケミカル社の「ワールドセラ」シリーズ(無機ハイブリッド)を採用しました。
- 屋根:ワールドセラルーフ SC-42
- 外壁:ワールドセラグランツ 22-60C
- 付帯部:ワールドセラルーフ


無機ハイブリッド塗料は、シリコン・フッ素を超える耐候性を持つ最高級グレードです。一般的な工事では、屋根・外壁にハイグレードを使い、付帯部には1〜2段下のシリコン系を充てるケースが多くなります。付帯部にも無機ハイブリッドを使うのは、屋根・外壁と同じ耐用年数で揃えるためです。付帯部だけが先に劣化すると、塗り替えサイクルがズレて、結果的に総工費が上がります。
なお、屋根の下塗りには浸透性クリヤーのKFスーパーエポⅡ、ベランダ床面には2液型ウレタン防水のプルーフロン GRトップを採用し、それぞれの部位に最適な専用材で施工しています。
ヨコイ塗装はワールドセラ認定施工店として、メーカー仕様書に基づいた施工方法を遵守しています。塗料そのものの性能を最大限引き出すには、メーカーが想定した塗布量・希釈率・塗装間隔で施工する必要があり、これがそのまま「品質管理5項目」につながっていきます。
ヨコイ塗装の品質管理 5項目
外壁塗装業界では「3回塗り」「メーカー仕様書通り」といった言葉がよく使われます。しかし実際にその通りに施工されているかを数値で確認できる塗装店は、決して多くありません。
ヨコイ塗装では、以下の5項目をすべての現場で実施しています。
1. 温度・湿度データの記録
塗料は気温と湿度で硬化挙動が変わります。メーカー仕様書には「気温5℃以下、湿度85%以上では施工を避ける」と明記されていますが、これを実際に計測して記録している塗装店は限られます。
ヨコイ塗装では電子温湿計を使い、現場始めに温度・湿度を測定しています。
そして、ここが他社にはあまりない仕組みなのですが、測定した温度・湿度はLINEで施主様にお送りする日次レポートに毎日記載しています。つまり、温度湿度の記録が——
- 施主様のLINEトーク履歴
- 弊社のLINEトーク履歴
——の両方に、日付・時刻つきで自動的に残ります。後から書き換えることができない第三者性のある記録として、施工後何年経っても確認できる仕組みです。
本現場での実測記録(一部抜粋):
日付: 3月23日 / 工程: 屋根下塗り / 気温: 18.1℃ / 湿度: 43% / 使用塗料: KFスーパーエポⅡ
日付: 3月25日 / 工程: 外壁下塗り / 気温: 14.6℃ / 湿度: 55% / 使用塗料: ワールドセラグランツ
日付: 3月30日 / 工程: 屋根仕上げ / 気温: 23.2℃ / 湿度: 51% / 使用塗料: ワールドセラルーフ
日付: 4月3日 / 工程: 外壁中塗り / 気温: 16.8℃ / 湿度: 38% / 使用塗料: ワールドセラグランツ
日付: 4月14日 / 工程: ベランダ防水 / 気温: 20.7℃ / 湿度: 43% / 使用塗料: プルーフロン GRトップ
すべての記録写真は、塗料缶・電子温湿計・はかり・新品ローラーを1枚に収めて撮影し、施主様にLINEで共有しています。


「気温5℃を下回りそうな朝は午後から開始する」「湿度が85%を超えてきたら撤収する」——こうした判断を、感覚ではなく数値で行い、その数値を施主様と共有する。これがヨコイ塗装の品質管理の出発点です。
2. 新品ローラーの使用
ローラーは消耗品です。前の現場で使ったローラーを使い回すと、毛羽立ちや塗料残渣がムラの原因になります。
ヨコイ塗装では、下塗り・中塗り・上塗りのそれぞれで新品ローラーを使用しています。一回の現場で最低3本、外壁と屋根を別管理すれば6本以上の新品ローラーを使うことになります。

なぜここまで徹底するのか。理由は塗膜の厚みに直結するからです。
ローラーを使い回すと、前の塗料がローラー内部で固まってしまい、新しい塗料を十分に含ませることができなくなります。結果として、ローラーから壁に塗料が乗る量が減り、塗膜が薄くなるのです。
「3回塗ったから大丈夫」ではなく、「3回塗って、それぞれの工程で必要な塗膜厚が確保できているか」が品質の本質です。新品ローラーの使用は、その塗膜厚を確保するための最も基本的な投資だと考えています。
3. 希釈率の計測
「水で薄める」「シンナーで薄める」と一言で言いますが、メーカー指定の希釈率(例:5〜10%)を目分量ではなく計測するかどうかで、塗膜性能は大きく変わります。
ヨコイ塗装ではアナログスケール(重量計)を使い、塗料1〜2kg単位で毎回計測しています。
特に徹底しているのが、屋根の上での目分量小分けは絶対にしないというルールです。屋根作業中であっても、希釈剤を追加するときは必ず下に降りて、スケールで計量してから屋根に上げ直します。
「上で適当に少し足しておく」という小さな手抜きが積み重なると、面ごとに塗膜の硬化挙動が変わってしまい、数年後に部分的な色褪せやチョーキングとして現れます。手間はかかりますが、これはどうしても譲れない部分です。
4. 2液配合比率の計測
2液型塗料は主剤と硬化剤の比率がズレると、硬化不良や早期剥離の原因になります。
ヨコイ塗装では希釈率の計測と同じアナログスケールを使い、配合比率を計量しています。そして、2液配合で最も徹底しているのが——
主剤と硬化剤は、使う量だけ、その都度計測する
——というルールです。「だいたいこれくらい使うだろう」という見込みで全量を一度に混ぜることはしません。

なぜか。2液型塗料は混ぜた瞬間から硬化反応が始まり、ポットライフ(可使時間)と呼ばれる「使える時間」が決まっているからです。気温23℃で4〜8時間、夏場ならさらに短くなります。
仮に1日分をまとめて混ぜてしまうと、午後使う塗料は朝より硬化が進んでおり、塗膜性能にバラつきが出ます。最悪、使い切る前に固まってしまい、廃棄するしかなくなります。
「使う直前に、使う量だけ、計量して混ぜる」——この一手間が、長期にわたって均一な塗膜性能を保つ鍵です。本現場のベランダ床面に施工したプルーフロン GRトップも、まさにこのルールで計量・混合を繰り返しました。
5. 塗装間隔の遵守
メーカー仕様書には「塗装間隔:23℃で4時間以上、16時間以内」のような指定があります。これを守らずに上塗りすると、塗膜間の密着が不十分になり、早期剥離の原因になります。
ヨコイ塗装のルールは、シンプルです。
基本、1日1工程。
朝に下塗りをして、午後に中塗りまで進める——という工程の詰め込みは行いません。下塗りは下塗りで1日かけて施工し、翌日以降に中塗りに進みます。
この「1日1工程」ルールは、本記事の施主様(H様)にお送りした日次LINEレポートを見ていただければ確認できます。本現場での屋根工程は——
- 3月17日:下塗り(1回目)
- 3月18日:下塗り(2回目)
- 3月21日:下塗り(3回目)
- 3月23日:中塗り
- 3月24日:上塗り
——というように、1日1工程ずつ進めています。LINEで毎日報告しているということは、第三者から見て塗装間隔を検証できる状態にしているということです。
「早く終わらせるために2工程詰め込む」「乾いたっぽいから次に進む」という判断は、数年後の早期剥離となって施主様に返ってきます。だからこそ、シンプルに1日1工程を守る。これが結果的に長持ちする塗装につながります。
本現場で発生した「現場判断」の記録
本現場では、当初の見積もり工程通りに進まなかった箇所が複数ありました。それでも「ここは追加で塗るべき」「ここは補修してから塗るべき」と判断し、追加対応を行った内容をすべて記録しています。
屋根:吸い込みが激しく下塗り3回
施工初期、屋根の下塗りを始めたところ、塗料の吸い込みが想定以上に激しいことが判明しました。
屋根の下塗りをやりました。けっこう劣化が激しく、吸い込みをしていますので、再度下塗りをして、しっかりと下地を固めたいと思います。(3月17日 H様への報告)

通常2回で済む下塗りを、本現場では3回実施。下地をしっかり固めてから中塗り・上塗りに移行しました。

外壁:脆弱な素地のため下塗り2回
外壁も同様に、素地の脆弱化が見られました。
外壁の下塗り(脆弱なのでしっかりと固める。おそらくあと一回下塗りが必要です)(3月25日 H様への報告)

実際にもう1回下塗りを追加し、計2回の下塗りで素地を強化しています。さらに上塗り前には、白色の吸い込みムラを防ぐための調整も実施しました。
帯のコーキング斜め施工 — 水滞留を防ぐ現場判断
本現場で最も技術的にこだわった点の一つが、帯の上部に施工したコーキングの「斜め」処理です。

帯の上面が水平になっていると、雨水が滞留して劣化を早めます。そこで、コーキングを充填する際に水勾配を作るように斜めに仕上げることで、水が自然に流れ落ちる構造にしています。
H様への報告でもこの意図をお伝えしました。
帯の上もコーキングが、してあります。参考画像の様に水が滞留して劣化をしない様に斜めになる様に施工してあります。(3月25日 H様への報告)
見積書に「コーキング 一式」と書かれていても、実際にこの斜め処理まで行っているかどうかは、見えない部分です。だからこそ、写真で残し、施主様にお伝えするようにしています。
コーキング・シリコン補修(追加対応)
施工中に発見したリスク箇所には、その都度コーキング・シリコン補修を実施しました。
- ひび割れ箇所:屋根のひび割れ部分にコーキングを充填
- 帯の上部:水が滞留しないよう、コーキングを斜めに施工(前述)
- 雨水侵入リスク箇所:外壁内部への水侵入を防ぐためシリコンで封止
- 腐食箇所:腐っていた部分の上部もコーキングで封止
これらは見積もり外の対応ですが、「やらないよりやった方が安心」という判断で、すべて施工しています。
大工さんとの連携:峰板金下の木板交換
施工中、屋根の峰板金がぐらついていることを発見。中の木板の腐食が原因と判断し、信頼できる大工さんに連絡。

- 見積もり:約5万円
- 内容:峰板金下の木板を交換、外側の板金は再利用
- 仕上がり:板金で隙間も追加で埋めていただき、雨水侵入リスクを大幅に低減


塗装店だけで完結させず、必要なときは大工工事を組み合わせるのが、長持ちする施工につながります。
施主様とのやり取りから
「ケレン作業とは?」への解説
施工初期、H様から「ケレン作業とはどのような作業ですか?」とのご質問をいただきました。
ヨコイ塗装の回答:
・表面に微細な傷を付けて塗料の密着性を高めます。
・表面の汚れをケンマロン(研磨布)で磨いて落とします。
表面がツルツルだと塗膜がペロッと剥がれやすいです。
業界用語をそのまま使うのではなく、なぜその作業が必要なのかを施主様にお伝えすることを大切にしています。
夜勤のご家族への配慮
施工期間中、ご家族の方が夜勤で日中お休みされる週がありました。H様からのご相談を受け、呼び鈴を鳴らさずそのまま作業を進める対応をさせていただきました。施工はもちろん大切ですが、住んでいる方の生活リズムを乱さないことも、同じくらい大切だと考えています。
玄関タイルの色ムラ対応
施工終盤、玄関前のタイルに過去の塗料垂れによる白い色ムラがあることをご相談いただきました。再度の部分洗浄ではなく、業務用洗浄機で全面的に洗浄し、色ムラが目立たないよう対応しました。
工程ハイライト(時系列)
日付: 3/12 / 主な作業: 足場組立
日付: 3/13 / 主な作業: ケレン作業(峰板金、雨樋、帯、破風板、雨戸)
日付: 3/16 / 主な作業: 高圧洗浄
日付: 3/17〜21 / 主な作業: 屋根下塗り(3回)、軒裏、破風、鼻隠し
日付: 3/23〜24 / 主な作業: 屋根中塗り・上塗り、雨樋・鼻隠し
日付: 3/25〜31 / 主な作業: 外壁下塗り2回、屋根仕上げ
日付: 4/3〜7 / 主な作業: 外壁中塗り・上塗り、玄関・ベランダ骨材補修
日付: 4/9〜13 / 主な作業: 雨戸、縦樋、帯、水切り、ベランダ床面
日付: 4/16 / 主な作業: 雨水侵入リスク箇所のシリコン補修
日付: 4/22 / 主な作業: 屋根全体写真撮影、最終掃除
日付: 4/24 / 主な作業: フェンス取付、足場解体、施工完了

雨天による中断・順延が複数回ありましたが、無理に施工せず、乾燥状態を確認してから次工程に進むという基本を守りました。
横井から一言
H様邸の施工が終わったのは、まさに塗料供給がいよいよ厳しくなってきたタイミングでした。施工完了のご報告の際、H様にもこうお伝えしました。
もう塗料がまともに手に入らなくなってしまいました。その前に無事終えられて良かったです。
塗料メーカー各社の値上げ、シンナー・希釈剤の供給制約、シーリング材の受注停止——2026年は、外壁塗装業界にとって構造的な転換点を迎えています。「ちゃんとした塗装」を「ちゃんとした塗料で」できる時間が、確実に短くなっていることを、現場で日々実感しています。
だからこそ、一現場一現場、温度湿度を記録し、希釈率を計測し、必要なら下塗りを3回追加する——そうした基本を守り続けることが、私たち塗装店の責任だと考えています。
H様、このたびはヨコイ塗装をご指名いただき、本当にありがとうございました。アフター点検もお気軽にお声掛けください。
ヨコイ塗装について
愛知県扶桑町を拠点とする外壁塗装専門店です。施工歴25年、累計250件超の施工実績、塗装関連書籍3冊を上梓。創業50年(先代より承継、二代目)。
- 公式サイト: yokoi-tosou.net
- セカンドオピニオン: penki-mikata.com
- YouTube: @yokoi-tosou(637本以上の現場動画を公開中)
★H様アンケート(紙アンケート回収後に追記予定)
★ 公開前に確認・追記が必要な項目
- H様アンケート結果(紙アンケート回収後に「施主の声」セクションへ追記)もしかするとアンケート書いて頂いてるかもしれません、確認よろしくお願いします

