冬の結露、ただの窓の水滴だと思っていませんか?あなたの家を蝕む3つの意外なリスク



冬の結露によって塗装やシーリング材の乾燥が遅れると、建物の品質や耐久性に様々な悪影響が生じる可能性があります。その現象と対策について以下に詳しく説明します。


冬の結露で乾燥が遅れると何が起こるか

冬の低温・高湿度の環境下で乾燥が遅れると、主に以下の問題が発生します。

  1. 塗装工事の品質低下
    • 塗膜の不具合:気温が低い日や日当たりの悪い面では乾燥が遅れるため、塗膜の乾燥不足や塗りムラ、ひび割れ、膨れなどの不不具合が出やすくなります。特に中塗りが十分に乾燥しないうちに上塗りを重ねると、内部の乾燥が不十分なまま次の層が固まり、後から剥がれやムラの原因となります。これにより、塗料本来の性能や耐久性が発揮されなくなります。
    • 凍害:お風呂場周りのサイディングでは、冬の低い気温によって換気扇から出る湯気が凍結し、サイディングが劣化する「凍害」が起こりやすくなります。スレート瓦の塗膜が雨水の浸透を低減できない場合も、材質の劣化や凍害による割れが発生する可能性があります。
    • 施工条件からの逸脱:冬の凍てついた朝に、北側や日が当たらない裏側を塗装するような行為は、施工して良い条件から完全に外れており、気温条件を無視した不適切な作業です。
  2. シーリング工事の不具合
    • 硬化遅延と不具合:低温や高湿度の条件下でのシーリング施工は、所定の性能確保が難しく、耐久性の低下を引き起こす可能性があります。硬化遅延だけでなく、スランプ、しわ、亀裂、変形、発泡などの問題が発生することがあります。
    • 薄層未硬化現象:多湿な条件下で、目地の両端や異種シーリング材との打継部分などの非常に薄い厚さのシーリング材が硬化しない現象(薄層未硬化現象)が発生することがあります。これはシーリング材中の反応促進触媒が空気中の水分によって分解されることが原因と考えられ、劣化や変色につながります。
    • 接着不良:コンクリート打設後の養生期間が短い場合や、降雨・降雪後の乾燥が不十分な場合には、コンクリート中の水分が多く残り、シーリング材の接着性が不十分となることがあります。
    • 変色:温泉地など硫化水素ガスが発生する場所では、ポリウレタン系やポリサルファイド系などのシーリング材が変色することがありますが、これは表層部分の変色であり物性には影響しないとされています。
    • 硬化不良:シリコーン系シーリング材は、密閉された箇所では水分供給や反応生成物の揮散が不十分となり、硬化不良を起こすことがあります。また、シリコーン系または変成シリコーン系とポリウレタン系やポリサルファイド系が固まらない状態で隣接すると、反応生成物によって硬化不良が発生する可能性があります。
  3. 建物全体の被害
    • シロアリ被害:雨漏りや結露水による水分の供給がある場合、シロアリが繁殖するリスクが高まります。これにより、建物の木材が食害を受ける二次被害が発生し、放置すると取り返しのつかない事態に発展する可能性があります。特に、入居者のいない空き家や別荘では定期的な点検が重要です。
    • 防水層の膨れ:広い面積の陸屋根の防水改修工事で、ウレタン塗膜防水の密着工法が採用された場合、コンクリート内部に滞留する水分が太陽熱で水蒸気化し、膨張して防水層を突き上げて**「膨れ」が発生する**ことがあります。この膨れは最終的にウレタン塗膜の破断につながります。
    • 雨漏りの再発・悪化:屋根の勾配が緩い場合や軒樋に落ち葉が堆積するなどして排水が滞ると、雨水があふれて軒先部分から建物本体へ雫が伝わり、雨漏り被害を及ぼすことがあります。スレート瓦屋根では、重なり部分が塗料で塞がれると、裏側に浸入した雨水が逃げ場を失い、釘の貫通部などを伝って屋根裏に雨漏りを起こすことがあります。

対策は?

冬の結露や乾燥遅延による不具合を防ぐためには、以下の対策が有効です。

  1. 塗装工事における対策
    • 乾燥時間の厳守と工期管理
      • 塗り重ね乾燥時間をしっかりと守り、1日1工程を基本とします
      • 特に気温が低い冬季や日当たりの悪い面では乾燥が遅れるため、工程間の間隔を長めに設定する必要があります。
      • 気温5℃以下や湿度85%以上といった悪条件下での作業は中止し、品質を優先して作業を中断すべきです。
      • 無理な工期設定は乾燥不足や塗りムラなどの不具合につながるため、余裕を持った作業計画を立ててもらうことが重要です。
    • 適切な塗料の使用と管理
      • 塗料はメーカー指定の希釈率を守り、秤でしっかりと計量して塗料を作ります。塗布量が少ないと耐久性が低下する可能性があります。
    • 下地処理の徹底
      • 高圧洗浄で汚れ、カビ、コケ、既存塗膜の脆弱部をしっかりと落とし、十分に乾燥させてから専用の下塗り材を塗布します。特に北側や室外機の裏など湿気でカビが出やすい場所は念入りに洗浄します。
    • 経験豊富な職人や信頼できる業者選び
      • 塗装工事の品質は職人の仕事に対する姿勢に大きく左右されるため、仕事に誇りと情熱を持ち、工程管理の重要性を理解している職人を選ぶことが重要です。
      • 「地域の信用第一」で、アフターサービスにもすぐに応対できる業者が推奨されます。
      • 工事進捗状況をアプリで報告し、温度・湿度・天気も電波時計で報告するなど、透明性の高い業者を選ぶと安心です。
    • 具体的な施工箇所の配慮
      • お風呂場周りのサイディング凍害対策として、換気扇の張り出し口を長くし、水がサイディングに直接当たらないように換気扇を交換する必要があります。
      • ベランダ周りなど劣化が激しい部分は、1回余分に塗装するのも有効です。
      • スレート瓦屋根の塗装後には、瓦の重なり部分に詰まった塗料を切る**「縁切り」作業が重要**です。
  2. シーリング工事における対策
    • 施工時期と環境条件の配慮
      • 盛夏や厳冬期は、スランプ、しわ、硬化遅延、降雪時の施工による不具合が発生する可能性があるため、計画段階で時期をずらすか、シーリング材メーカーとの事前協議が必要です。シーリング施工時の温度と湿度に留意します。
    • 適切な施工方法の厳守
      • シーリング材の基剤、硬化剤、着色剤の混合比はメーカーが決定したものを必ず守り、可使時間を調整するために混合比を変更してはいけません
      • コンクリートなど水分を多く含む被着面への施工は、十分な乾燥期間を確保する必要があります。
      • 1成分形シーリング材でもプライマーの使用を省略すべきではありません
      • 薄層未硬化現象を防ぐため、ヘラ仕上げのアールをできるだけ小さくし、マスキングテープを目地の縁一杯に張ることが重要です。
      • 練り混ぜ時の気泡混入を少なくするため、減圧脱泡やドラム回転形ミキサーなどの適切な練り混ぜ方法を採用します。
    • 密閉箇所の換気
      • 密閉された室内や換気の悪い場所での硬化不良を防ぐため、窓を開けたり、強制的に換気するなどして反応副生成物の揮散を促進します。
  3. 建物全体のメンテナンス対策
    • 定期的な点検と清掃
      • フラットルーフの排水ドレンやバルコニーの排水口は、落ち葉やゴミなどで詰まりやすいため、こまめな点検と掃除が非常に大切です。
      • 年に1回はセルフ点検(チョーキング、ひび割れ、苔、雨樋の詰まりなど)を実施することが長持ちの秘訣です。
    • 排水経路の確保と増設
      • 唯一の排水経路が機能しなくなった場合に備え、「オーバーフロー管」を新設して排水経路を増やすことが有効です。これは、雨水が室内側に浸入しないように、出入口扉の下枠よりも低い位置に設置します。
    • 適切な防水工法の選択
      • 広い面積の陸屋根の防水改修工事では、ウレタン塗膜防水の密着工法ではなく、通気緩衝シートを張って通気層を設ける**「通気緩衝工法」を採用することが一般的**です。この工法により、下地からの水蒸気を吸収し、脱気筒から放出することで、防水層の膨れを防ぐことができます。

これらの対策を講じることで、冬の結露や乾燥遅延に起因する様々な不具合を未然に防ぎ、建物の品質と耐久性を長期的に保つことができます。

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