塗装工事の全工程(作業内容)を詳しく教えてください。

目次

はじめに

大切なお住まいの外壁塗装を考えるとき、誰もが「美しく、長持ちする仕上がり」を望むはずです。しかし、数多くの業者の中からどこを選べば良いのか、見積もりの金額だけで判断して良いものかと、不安に感じる方も少なくないでしょう。

実は、塗装工事の本当の品質は、完成後の見た目の美しさだけでは決まりません。むしろ、一般の人の目には触れない「見えない工程」にこそ、その建物の寿命を左右するプロの仕事が隠されています。この記事では、住宅メンテナンスの専門家として、高品質な塗装工事とそうでないものを分ける、驚くほど重要ないくつかのポイントを明らかにします。

ポイント1:塗装の「命」は塗ることではなく、その前の「下地処理」にある

多くの施主様は塗料の色や仕上げに注目しがちですが、プロが見ているのはその前段階です。塗装の耐久性は、塗料を塗る前の「下地処理」がいかに丁寧に行われたかで決まると言っても過言ではありません。この準備工程こそが、塗装工事全体における最も重要なプロセスです。

下地処理は、塗装の品質と寿命を決定づける最も重要な工程であり、ここを怠ると塗膜が早期に剥がれる原因となります。

この「下地処理」と一言で言っても、その内容は高圧洗浄、ケレン作業、シーリング補修、クラック補修など、多岐にわたる地道な作業の積み重ねなのです。これらの見えない仕事の一つひとつが、塗料の性能を最大限に引き出すための土台となります。

ポイント2:「ケレン作業」は単なる掃除ではない。塗料を食い込ませるための意図的な「傷つけ」

下地処理の中でも特に重要なのが「ケレン作業」です。これは古い塗膜やサビを落とすだけの単なる掃除ではありません。その真の目的は、サンドペーパーなどを使って塗装面に意図的に微細な傷(目粗し)をつけることにあります。

この無数の傷が、新しい塗料が物理的にガッチリと掴まるための足がかりとなります。これを**「アンカー効果」**と呼び、塗料の密着性を劇的に向上させるのです。驚くかもしれませんが、この作業は新品のカバーや金属製のシャッターなどに対しても必須であり、これを行うかどうかがプロの仕事を見分ける一つの指標になります。

ポイント3:シーリング(コーキング)は「増し打ち」ではなく「打ち替え」が鉄則

サイディング外壁のパネルの継ぎ目を埋めているゴム状の素材がシーリングコーキング)です。これは建物を雨水の侵入から守る重要な役割を担っています。

ここでの鉄則は、古いシーリング材の上に新しいものを重ねる「増し打ち」ではなく、古いものを完全に撤去してから新しいものを充填する「打ち替え」を行うことです。古いシーリングの上に新しいものを重ねても、劣化した古いシーリングごと剥がれ落ちてしまうため、意味がありません。プロの「打ち替え」は、①古いシーリングを撤去した後、②新しいシーリング材の密着性を高めるための「プライマー」を塗布し、③それから新しい材料を充填するという手順を踏みます。このプライマー工程を省くと、新しいシーリング材が本来の性能を発揮できず、早期の剥離につながります。

さらに、プロは動きが生じる目地(ワーキングジョイント)に対して、目地の底にシーリング材を接着させない**「2面接着」**という技術を用います。これにより、建物の動きに柔軟に追従し、長期的な耐久性を確保するのです。

ポイント4:品質は「乾燥時間」で決まる。「1日1工程」が理想のペース

「できるだけ早く工事を終わらせてほしい」と思うのは自然なことですが、塗装工事において焦りは禁物です。下塗り、中塗り、上塗りの各工程で塗られた塗料には、塗料メーカーが定めた適切な乾燥時間が必要です。

理想的なペースは**「1日1工程」**と言われています。この時間を守らずに次の工程に進むと、塗膜の内部に水分が閉じ込められ、将来的な膨れや剥がれの原因となります。また、気温が5℃以下、または湿度が85%以上の環境では塗膜に不具合が生じやすいため、作業自体を避けるのがプロの判断です。

ポイント5:塗料は化学製品。正確な「計量」が高品質の証

プロが使用する塗料は、その性能を100%発揮するために正確な取り扱いが求められる化学製品です。信頼できる業者の仕事には、以下のような細やかな配慮が見られます。

  • 秤(はかり)を使った正確な希釈:塗料を薄める「希釈」の割合は、メーカーによって厳密に定められています。優れた職人は、勘に頼るのではなく秤を使って正確に計量し、塗料が持つべき性能を確実に引き出します。
  • 二液型塗料の正確な混合:さらにプロ用の高耐久塗料には、主剤と硬化剤を現場で混ぜ合わせる「二液型」が多くあります。この二つの液体をメーカー規定の比率通りに、これもまた秤を使って正確に混合しなければ、塗料が正しく硬化せず、耐久性が著しく低下する原因になります。
  • 素材に応じたプライマーの選定:例えば、エアコンの化粧カバーのようなプラスチック素材には、塗料が密着しにくい特性があります。そのため、「ミッチャクロン」のような専用のプライマー(下塗り材)を使用して、塗料がしっかりと食いつくように下準備を行います。

ポイント6:艶(つや)の選択はデザインだけじゃない。「艶あり」の方が高耐久

塗料を選ぶ際、艶(つや)の有無はデザインの好みで決めることが多いかもしれません。しかし、ここには実用的な性能の違いが存在します。

一般的に、艶消し(マット)仕上げよりも、艶あり(グロス)仕上げの方が耐久性は高くなります。 なぜなら、艶あり塗料の表面はツルツルしているため、汚れが付着しにくく、雨水で洗い流されやすいからです。もちろん、近年では高性能な艶消し塗料も開発されていますが、耐久性という観点では「艶あり」に軍配が上がるという原則は知っておくと良いでしょう。

ポイント7:エアコンカバーの塗装方法にこそ、プロの「配慮」が現れる

エアコンの化粧カバーの塗装方法一つをとっても、業者の配慮の深さがわかります。最も推奨される方法は**「取り外し塗装」**です。

これは、一度カバーを取り外し、その裏側にある壁面をきちんと塗装します。その後、カバー自体にもケレン作業で下地を整え、下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りを施し、完全に乾いてから再度取り付けるという手間のかかる方法です。なぜこれを行うのか? それは、将来エアコンを交換する際に、カバーが塗料で壁に固着してしまい、無理に剥がすと壁やカバーが破損するのを防ぐためです。数年後、数十年後のことまで見越したこの一手間こそが、真のプロフェッショナリズムの現れです。

まとめ

高品質な外壁塗装とは、単に美しく塗るだけでなく、見えない部分での緻密な下準備と、化学製品である塗料への深い理解に基づいた職人技の結晶です。完成後には隠れてしまう部分にこそ、建物の寿命を延ばすための重要なポイントが詰まっています。

これから業者を選ぶ際には、ぜひこう自問してみてください。 「あなたの依頼する業者は、今回ご紹介したような『見えない部分』にまでこだわってくれるでしょうか?」

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