築10年で外壁塗装?早すぎる劣化を招く「まさか」の5つの原因
フッ素や無機といった高耐久な塗料を選び、これで15年、20年は安心だと考えていた我が家の外壁。しかし、築10年を過ぎたあたりで、塗膜の剥がれやひび割れといった劣化のサインが見え始めた…。このような経験に、心当たりがある方もいらっしゃるかもしれません。
なぜ、期待していた耐用年数よりもずっと早く劣化が始まってしまうのでしょうか?塗料のグレードが悪かったからでしょうか。実は、その原因は塗料そのものではなく、塗装工事の見えにくい工程に隠された「施工不良」にあることがほとんどです。
この記事では、皆様の大切な資産である住まいを守るために、なぜ高価な塗装が期待を裏切るのか、その根本原因をプロの視点から徹底的に解明します。
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1. 原因1:塗装の寿命の9割を決める「見えない下地処理」の手抜き
外壁塗装が長持ちするかどうかを決定づける最も重要な要素は、実は上から塗る塗料ではなく、その前段階である「下地処理」です。しかし、この工程は完成後には見えなくなるため、コストや時間を削減したい業者によって手抜きがされやすい、まさに「要注意ポイント」なのです。
塗装工事において「下地処理(素地調整)」は、長持ちする塗装を実現するための「命」ともいえる不可欠な工程ですが、ここでの手抜きが早期劣化の最大要因となります。
具体的には、以下のような手抜きが横行しています。
- ケレン作業の省略 古い塗膜やサビを削り落とすことで、新しい塗料が壁にしっかりと密着します。この工程で表面に微細な凹凸を作ることで、塗料ががっちりと掴まる「アンカー効果」が生まれ、剥がれにくい強靭な塗膜が実現します。これを省略すると、どれだけ高価な塗料を塗っても、あっという間に剥がれてしまいます。
- シーラー・プライマーの不使用 シーラーやプライマーは、壁と新しい塗料をくっつける「接着剤」の役割を果たします。これを塗らないと、塗料の吸い込みが不均一になり「塗りムラや色ムラ」が発生するだけでなく、金属やエアコン化粧カバーのようなツルツルした素材では、塗料がすぐに剥がれ落ちてしまいます。
- 劣化した下地の補強不足 年月が経ち、表面が粉っぽくなった古い壁にそのまま塗装すると、新しい塗膜が劣化した下地ごと一緒に剥がれ落ちてしまいます。これを防ぐためには、浸透性の高い下塗り材で下地を固める「補強」が必要不可欠ですが、このひと手間が省かれることがあります。
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2. 原因2:「急がば剥がれる」—職人が守らない乾燥時間
外壁塗装は、「下塗り」「中塗り」「上塗り」というように、複数回に分けて塗料を重ねていきます。このとき、各工程の間で塗料を乾かすための「乾燥時間」が極めて重要になります。
塗料メーカーは、製品ごとに適切な乾燥時間、いわゆる「塗り重ね間隔(インターバル)」を指定していますが、工期を短縮したい一部の業者はこれを無視して、乾ききらないうちに次の塗装を始めてしまいます。この手抜きが、後々の塗膜の剥がれや膨れ、ひび割れといった深刻な劣化を引き起こすのです。
安心して任せられる業者は、各層を十分に乾燥させるため「1日1工程」というペースで作業を進めることが理想とされています。また、気温が5℃以下、湿度が85%以上といった悪条件下で無理に施工を進めることも、塗膜の性能を著しく低下させる原因となります。
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3. 原因3:塗料がこっそり薄められている?性能を落とす不適切な希釈
信じがたいことですが、使用する塗料そのものが「手抜き」の対象になることがあります。一部の業者は、材料費を節約したり、作業効率を上げたりするために、塗料を規定以上にシンナーなどの溶剤で薄めて使用することがあります。
塗料を過度に薄めると、本来形成されるべき塗膜(保護フィルム)が必要な厚みに達しません。その結果、塗料が持つ本来の耐久性や保護機能が著しく低下し、期待される耐用年数を大幅に下回ってしまうのです。
さらに悪質なケースでは、秤を使わずに職人の「目分量」で希釈が行われることもあり、品質が不均一で信頼性の低い塗装になってしまいます。
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4. 原因4:壁だけ見ていては見逃す、シーリングの劣化という盲点
塗装の劣化を考えるとき、多くの人は壁の「面」に注目しがちですが、実はもう一つ重要なチェックポイントがあります。サイディング外壁において、このシーリング材は水の侵入を防ぐ「第一の防衛線」とも言える重要な部分です。それは、サイディングボードの継ぎ目を埋めているゴム状の「シーリング材」です。
このシーリング材は、多くの場合、外壁の塗膜よりも先に劣化が始まります。シーリングがひび割れたり、痩せて隙間ができたりすると、そこから雨水が壁の内部に侵入してしまいます。
壁の裏側に入り込んだ水は、内側からサイディング材そのものや塗膜を傷め、塗装の剥がれや膨れといった劣化を加速させる、見過ごせない原因となります。
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5. 原因5:安さの裏側—「下請け構造」が生み出す品質低下の圧力
これまで挙げてきた手抜きの背景には、業界の「下請け構造」というビジネス上の問題が潜んでいます。
多くの塗装工事では、元請け業者が受注し、実際の施工は下請けや孫請けの業者に流されます。その過程で各社が「中間マージン」を抜いていくため、実際に現場で作業する職人や会社に渡る予算は大幅に削られてしまいます。
限られた予算と短い工期で利益を出さなければならないという強いプレッシャーが、結果として「見えない部分」での手抜きを誘発するのです。この予算と納期のプレッシャーこそが、本来省略してはならない下地処理や乾燥時間を軽視させる、最大の構造的要因なのです。中には、30坪(約100㎡)の家をわずか3日で終わらせるような極端な業者も存在しますが、これは品質を完全に犠牲にしている典型的な赤信号です。
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まとめ:本当に大切なのは「何で塗るか」より「誰がどう塗るか」
外壁塗装の寿命は、必ずしも「どのグレードの塗料を使うか」だけで決まるわけではありません。むしろ、完成後には見えなくなってしまう下地処理や、決められた工程を遵守するといった「誰が、どのように塗るか」という施工の品質に大きく左右されます。
今回ご紹介したように、早期劣化のほとんどは、防ぐことが可能な「施工不良」が原因です。
次の塗り替えで業者を選ぶ際、あなたは価格と、見えにくい部分の品質、どちらを重視しますか?
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