腕のいい塗装職人でも失敗する?リフォーム前に知っておきたい塗装業界の意外な真実3選
Introduction
マイホームの外壁塗装は、建物の美観と寿命を左右する重要なリフォームです。せっかくなら腕のいい職人にお願いして、美しく長持ちする仕上がりを実現したい。しかし、どの業者を選べば良いのか分からず、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
塗装の品質を決定づけるのは、職人の技術力というより、むしろその技術力を発揮させなくする業界の構造的欠陥なのです。住宅業界の分析では、塗装品質は以下の公式で表せます。
品質 = 「職人のやる気」 × 「技術と塗料の種類」 × 「作業にかけられる時間」
この記事では、業界の構造がいかにしてこの公式の「やる気」と「時間」を削り取り、最高の「技術」を無駄にしてしまうのか、その意外な「3つの真実」を明らかにします。
1. 最も重要な工程は、完成後には見えない「下地処理」という真実
塗装工事において最も重要な工程は、最後の仕上げ塗りではありません。それは、塗料を塗る前の準備であり、完成後には完全に見えなくなってしまう「下地処理」です。
下地処理の要である「ケレン作業」とは、古い塗膜やサビ、汚れなどを物理的に削り落とし、壁面を清浄にする作業を指します。これに加え、下地と新しい塗料を密着させる「接着剤」の役割を果たす「シーラー」という下塗り材を塗布します。これら地味な作業が、新しい塗料を壁にしっかりと密着させ、塗料本来の耐久性を最大限に引き出すための土台となるのです。
しかし、これらの工程は完成後には確認しようがないため、残念ながら「最もごまかしやすい部分」でもあります。工期やコストに追われた業者は、ケレン作業を簡略化したり、シーラー塗装を省略したりといった手抜きを、この見えない部分で行う傾向があります。シーラーを省略すれば、どんなに高級な塗料を使っても数年で剥がれてしまいます。
下地処理は塗装の命
私たちはつい、塗料の色やブランドといった目に見える部分に注目しがちです。しかし、その投資が本当に長持ちするかどうかは、この見えない土台づくりにかかっているという事実を、まずは知っておく必要があります。
2. あなたの工事費はどこへ消える?「多重下請け構造」の衝撃的な実態
なぜ、腕のいい職人がいるはずの現場で、先述のような手抜き工事が起こってしまうのでしょうか。その最大の原因は、業界に根付く「多重下請け構造」にあります。これは、品質の公式における「職人のやる気」を構造的に破壊する仕組みです。
これは、施主が契約した大手リフォーム会社などから、実際の工事が下請け、孫請けへと次々に発注されていく仕組みです。この構造では、元請け業者が莫大な広告費や営業コスト、中間マージンを差し引いていくため、実際に工事を行う職人の手元には驚くほど少ない金額しか渡りません。
例えば、施主が180万円を支払った工事で、末端の職人に支払われる対価がわずか45万円程度になってしまうケースも報告されています。
この因果関係は明白です。極端に低い報酬で工事を請け負った職人は、生活のために丁寧さよりもスピードを優先せざるを得ません。その結果、塗料が乾くのを待たずに次の工程に進んでしまう「乾燥不足」といった手抜きが横行します。これは後に塗膜の剥がれやひび割れ、膨れといった致命的な欠陥を引き起こします。どんなに腕の良い職人でも、これでは仕事へのモチベーション(職人のやる気)を維持することは困難です。
問題の本質は「腕の悪い職人」ではなく、優れた職人の意欲と技術を無力化してしまう「悪い仕組み」にあるのです。
3. 優良業者を見抜く意外なサイン、「自社で足場を持っていますか?」
では、どうすれば品質を重視する優良な業者を見抜けるのでしょうか。それは品質の公式における「作業にかけられる時間」を確保する経営哲学があるかを見極めることです。意外かもしれませんが、「足場を自社で保有しているか」という質問が、そのための非常に有効な判断材料になります。
足場をレンタルしている業者は、日々のレンタル費用を抑えるために工事を急がざるを得ません。雨や高湿度といった塗装に不向きな天候でも作業を強行したり、乾燥時間を十分に取らなかったりする原因は、このレンタル費用にあることが多いのです。
一方で、足場を自社保有している会社は、日々の費用に縛られません。そのため、雨の日には作業を休み、各工程で十分な乾燥時間を確保する(理想は「1日1工程」)といった、品質を最優先した柔軟なスケジュールを組むことが可能です。これは単なるコスト削減ではなく、品質はプロセスへの投資から生まれるという経営哲学の表れです。
この他にも、営業エリアを絞った「地域密着」の業者は、現場への移動時間を削減し、その分を実際の作業時間に充てることができます。これもまた、品質のための時間を捻出する経営努力と言えるでしょう。「足場は自社保有ですか?」という質問は、その会社の仕事に対する哲学を見抜くための、強力なヒントになるのです。
Conclusion
外壁塗装の本当の品質は、目に見える仕上げの美しさだけでは決まりません。見えない部分の下地処理、職人が十分な時間をかけて丁寧な仕事ができるビジネス構造、そしてスピードよりもプロセスを重視する会社の姿勢。評価すべきは、目に見える最終製品から、それを生み出すための目に見えない仕組みへと移行させる必要があります。
次にリフォームを考えるとき、あなたは見積金額の先にある「仕事の仕組み」にまで目を向けることができるでしょうか?
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