クレームはペンキ屋さんのせい…?
外壁塗装におけるクレームは、
塗装業者にだけに責任を負わせがちです。
事実、私たちの塗装業者は、全力で良い仕事をしても、
実際に塗った塗料の性能のせいで評判を落とすことあります。
以前、
「お客様にも喜ばれる、納得の行く仕事をやったぞ!」
と思うことができた現場がありました。
そう思って数年がたったある日…
「屋根がもう色あせてきたけど、どういうことなの!!」
とお客様からお叱りの声を頂いたことがあります。
その現場で使用した塗料は、
皆さんも聞いたことのある有名なブランドで大手塗料メーカーのものです。
使用したのは、当時メーカーさんがおオススメしていた、
遮熱シリコンの屋根用塗料でした。
もちろん私には職人として、良い塗料を見極めて、
お客さんに提供する義務があります。
そして、メーカーがすすめる塗料を簡単に
信用してしまった落ち度があります。
しかし、塗料を比べることをこれまでしてこなかった
塗料販売店さんや、塗料を作って販売してきた
メーカーさんには、工事の品質の責任は全くないのでしょうか?
現実としてクレームを受けるのは、末端の職人です。
塗布量や乾燥時間など、
すごく品質にこだわって作業を行っ結果なのに、
こういったクレームが事実起こり、
そしてそのお客様とその後
すごく話しにくくなったことを覚えています。
「本当に良い仕事をしたのに、
なんでこんな目にあうのだろう…。」
こう思ったことのある職人さんや施工業者は、
本当に多いと思います。
それ以来、私は例え大手の業者であっても
メーカーがすすめる新製品には、
安易に手を出さないようにしています。
そして、このページを読んでいらっしゃる読者の方にも、
なるべく実績のある、安心できる塗料を選ぶことを
おススメします。
この点を踏まえて、塗料販売店さん勤務歴35年のOさんと
「良い塗装業者の見分け方」について対談しました。
塗料卸業30年のベテラン、Oさんとの対談インタビュー
横井:一番最初にOさんに聞きたいと思ったのは、塗装業者選びについてです。一般の方は、塗装工事の際にどこの業者を選んでいいかわからないと思います。Oさんは、塗料販売の業界経歴が長いじゃないですか。私が小学校の時にはもうやっておられましたよね。塗装業界で仕事をされて実質何年くらいですか?
Oさん:35年くらいにはなるんじゃないかな。
横井:うちの会社の創業とほぼ同じくらいですね。塗料を販売すると、職人さんからもたくさん情報が入ってきますよね。色んなつながりから、クレームとかも見たり聞いたりしていると思います。Oさんからみて、一般の方が塗装業者を選ぶコツってありますか? そして良いアドバイスはありますか?
Oさん:信頼性が大事だね。本当にしっかりとした施工をやってくれるかどうかだよ。例えば3回塗りのときに、本当に3回塗ってくれるかどうか。必ずやってくれるところが信頼できる塗装業者だね。
横井:一般の人は、2回塗っても3回塗っても見た目もほとんど同じなので、わからないですよね。多少色を変えて塗らないと、何回塗ったかなんてわからない。Oさんがもし、例えば親戚の人など近い人に業者選びでアドバイスをするなら、「この点に注意しろ!」っていうようなことはありますか。
Oさん:信頼性の見極めかな。3回塗りなら3回塗り、2回塗りなら2回塗りと予定通りの作業をするかどうか、しっかりと計量するかどうかなど、信頼できるところかどうかの見極めが大事だとアドバイスするね。
横井:塗膜の厚みなども一般の方にはなんか分からないですよね。うちはちゃんと計量していますが、ネットで見たところ、経験を頼りに目分量でやっている方もいますし、しっかりとしていないところなどは全く計量していないようです。シンナーで塗料をのばされて誤魔化されたとしても、一般の方ってわからない。
Oさん:3年ぐらい時間が経ってやっとわかるくらいだね。そのくらいの時間がかかるんだよね、塗装の良し悪しがわかるためには。

横井:一般のお客さんにとっては、それだと怖いですよね。結局どうやって業者を選べばいいのかがわからないと思うんですよね。それについては、どう思いますか?
Oさん:よくあるのは、実績で何件やったか、地元でやっているかという話を聞くことですね。「どこどこの業者で施工をして、年数これくらい経ったら、状況はこんな感じだよ」という情報を集めるとより良いかも。小さい業者であっても、納得できるように写真で施工例を示してもらう。実際に施工を始める前には、デジカメで住まいの状況を撮影してもらい、割れている箇所などを写真で確認する。施工が終わった時にも写真を撮影して施工状態を確認する。自分自身が納得することが大切。
横井:まだどこでやるか悩んでいる人は、そういうことを施工と同時にしてもらえるかどうか、見積もり時に確認するといいですね。
Oさん:そうそう。そうすると間違いがない。
横井:業者の選択には悩むけれど、ハウスメーカーさんなら安心感があるかもしれません。
Oさん:塗装店は安いけれど信頼度が…といううようには感じるかもしれないね。
横井:最近お客さんと会ってよく感じるのは、インターネットで勉強されている方が多いということです。ハウスメーカーは結局下請けに出しているだけだから、マージン取られるだけでだということもわかっている。でもインターネット上には色んな情報が玉石混交で、お客様も、実際にどうやって施工業者を選べばよいか悩んでいる。
Oさん:大手は、車でいうとディーラーにあたります。高くてもクレームを出した時にはちゃんと対応してくれる。小さい塗装屋さんは、町の小さな車屋さん。そういう小さいところが、「うちはディーラーほど大きくはないけれど、ちゃんと対応しますよ。」「あなたのクレームにも対応してちゃんと直しますよ!」というのと同じで、塗装工事でも、「すぐアフターサービスに来ますよ。」という姿勢が伝わってれば良いんじゃないかな。
あとは、やっぱり近いと早く来てくれやすいよね。こういうことが信用につながる。施工業者にとってはその後の営業にもつながる大切なことだよ。」
横井:一般の人にアドバイスするなら、アフターサービスに来てくれるかどうかも大きな目安になるってことですね。
Oさん:メーカーなんかがやっている50年保証とかというものは、実際には保証はほとんどない。
「メンテナンスしますよ。」とは言うものの、
「見に来ました。だから、メンテナンス費をください。」という内容のものもある。それで、結局お金が掛かってしまう。

横井:塗料の保証書ってあるじゃないですか。あれは実際は色あせとかについて保証されているだけであって、ペンキの剥がれとかになると塗装屋さんの責任だから、関係ないんですよね。私たち施工する側としては、色あせの品質についても、しっかりと補償出してほしいのが本音です。いざ保証書を発行してと依頼すると、断られる事もけっこうあります。高い値段の塗料の割に、塗料の品質については責任を取らずを逃げることもあるように思えます。
Oさん:僕達販売店側からみたら、塗料の中で余って使わないものがあるね。しっかりと測っていない職人さんが多いから、余るはずのない硬化剤が余っている(※2液型では主剤だけが消費期限切れを起こし、主剤と硬化剤のバランスが崩れることがあります)。ということは、ちゃんと入れるべき硬化材の量が、誤っていることがあるんですよ。ごまかしているっていう感じではないんですけれども、測り方が曖昧。だからメーカーも保証しづらいのかもね。
横井:ところで話は変わるんですが、料理の食材とシェフの腕と一緒と同じで、塗装の品質も塗料と職人の腕じゃないですか。食材の選び方にあたる塗料の選び方って難しくないですか?
例えば、お客さんはフッ素とかシリコンとかの塗料があるなかで、何を選んだらよいのかが分からない。私たち業者は、フッ素がおすすめですと言ってもフッ素塗料にも沢山種類があって、
フッ素の含有量が少なくて実はシリコンより耐久性が低く、長期間もたない塗料もある。となると、実際問題、本当は何がいい塗料なのかはすごく難しい。
Oさん:それは業界としてして決まりごとがないことだね。
昔からそうで、どこどこのシリコンは1万円。他のところは3万円。何が違うのかというと、シリコンの含有量が違う。どっちがいい塗料かって聞かれると答えるのが難しい。塗料は年数が経たないと、結局は実績が出ないから。
横井:塗料の販売店さんは、料理の味を比べの様には塗料を比べることができないじゃないですか。タイムラグが長いから。「これの方がいいですよ」と言われても、本当に比較するには10年前まで遡らないといけない。それを踏まえたうえで、一般の人がいい塗料を選ぶとなると、やはり難しい。
Oさん:難しいよね。昔ならペンキが主だったけど、ウレタンになってシリコンになって。フッ素が長期間もちますよと言われても、本当のところは分からない。ウレタンでもいいし、シリコンでもいい。流行りだとラジカルなんかもある。」
横井:実際にどれが良いかわからないから、結局見積書に出てくる金額と財布の相談になりますよね。」
Oさん:そうなっちゃう。あとは、どれぐらい昔からの塗料で、
どれぐらい実績があって、安心できるかどうかも判断材料になる。また、施工業者が、今の塗料を知っているかどうか。今の主流の塗料の中で、実績としてこのシリコンが良いよ、このフッ素が良いよっていうような話が出てくることが望ましいね。
横井:やっぱり塗料をしっかりと知っている業者が良いということですね。メーカーのおススメを鵜呑みにしないで、年数がある程度たっている実績がある塗料が安心ですね。
横井:また話が変わるのですが、よく2液の方が長持ちするとか、溶剤系と水性だと溶剤系の方が長持ちするとか言われていますよね。でも、水性でも塗料によっては、塗膜がけっこう厚くなって長持ちするものもありますね。
Oさん:基本的には塗布量が多いかどうかって話ですね、耐久性は。色変化でいうと、溶剤の方が樹脂とかの関係で劣化が少ないかもしれない。
横井:色落ちですか。
Oさん:例えば水性シリコンと溶剤シリコンを比べると、溶剤シリコンの方が色落ちは基本少ないように思います。
横井:順番としては、艶落ちしてから色素が落ちる感じですよね。あと、現状の塗料では、シリコンとかフッ素とかがありますが、その特徴を一言でいうとどうなるでしょう。一般の方に説明をしようとすると、なかなか説明しにくくて…。樹脂だけでも、その他にアクリル樹脂やシリコン樹脂、ウレタン樹脂などもありますね。ウレタンといえば、例えばシーリング剤にも種類がありますが、そもそもどういうものなんですか。
Oさん:ウレタン樹脂っていう分類しかないね。中に入っている樹脂の配合量によって呼び方が変わるようだよ。
横井:イメージで言うとウレタンが柔らかくて、シリコンが紫外線に強くて。フッ素の方がより紫外線に強いけど柔軟性が悪くてひび割れがし易いとか、一般のお客さんに説明しにくいなって。
Oさん:今の話、全部規定されているものではないからね。それに少しでもフッ素樹脂が入っていれば、フッ素塗料とうたってもいい。10年という長期間たった後に欠点が見つかったとしても、メーカーとしては販売し続けるとある程度は売れるからってのもある。
横井:「色あせたからどうしてくれるの!」ってお客さんに言われて困った経験のある業者さんも多く見かけます。」
Oさん:このメーカーのこの塗料はおかしいなどと具体的なことは言えないけど、本当に悪いものはごく僅かだよね。その点を考えても一般の方が塗料を選別するのってなかなか難しいんじゃないかって思う。塗装自体が、塗料だけでは成り立たないものだから余計にね。良い塗料もあれば、ちゃんとメーカーの規定通りに現場で計られないこともあるし。
横井:塗料を実際に塗る時の気温や湿度、配合率をちゃんと把握しているかを記録したものがあるといいですね。
Oさん:そういうのがあるかどうかってだけで、全然違うね。
横井:そういうのを自主的に提出してくれる業者さんを選んだほうが良いってことですよね。
Oさん:うちは工程ごとにちゃんと記録をとっていますよって。
経過写真も撮りますよって。
横井:うちはいま、それをアプリを使ってやっているんですけれども、お客さんにけっこう好評ですよ。あとでお見せしますね。

横井:ちなみにOさんが、遠方の親戚に「塗装業者をどうやって選んだらいい?」って聞かれたら、どうアドバイスしますか?
Oさん:実績かな。実績が信頼だから。料理屋の料理でも、美味しいとお客さんが来て、まずかったら来ない。そういう世界だから。
横井:結局はそうですね。
Oさん:地道にやっているところ、ちゃんとした工事をしたところは、10年くらいたってハガキで施工の案内を出すと、やっぱりお客さんは戻ってくるしね。塗りっぱなしで終わってしまう業者もあるけどね。
横井:やっぱり地道さは大切ですよね。
Oさん:続いてるのは理由があるんだよ。
横井:本日はお忙しい中、ありがとうございました。結局、続いていることが信頼に値するのかなって思いました。料理屋さんと一緒で、まずかったら業者は淘汰される。だから長い年月続いている業者が良いっていうこと。業者選びの本質かなと。
Oさん:こちらこそ、ありがとうございました。
以上対談終わり。
いかがだったでしょうか?
一般の方が塗料は何が良いかを見分けるのは、
本当に難しいです。でも、本当に良い塗料を見つける方法が無いかというと、そういうわけではありません。
実は本当に限られた職人ですが、長い年月をかけて、
地道に
塗料を塗り比べている方もいます。
そういった方をインターネットで調べあげて、
質問してみるのも良いかもしれません。